2025-12-2 働き方改革
働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分自身で選択できるようにするための一連の改革の総称である。2019年以降、労働基準法、労働安全衛生法など8つの関連法案が順次改正、施行され、この社会的な変化を支えている。厚生労働省によればその骨子は以下の2点に集約される。
・労働時間法制の見直し・・・働き過ぎを防ぐことで、働く方々の健康を守り、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現できるようにする。
具体的には、残業時間の上限規制や割増賃金率の引き上げ、年次有給休暇の取得義務づけ、「勤務間インターバル制」の導入などで労働時間に様々な規制をかける一方、就業時間で縛ることになじまない特殊な職種「高度プロフェッショナル」に対しては別の枠組みを準備している。企業による従業員の健康管理をかなり強力に求めている点も特徴的である。
・雇用形態に関わらない公正な待遇の確保・・・同一企業内における正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにする。
パートタイムや有期雇用の労働者に対して、同じ仕事の内容であれば同じ待遇を与える「均等待遇規定」と、相違がある場合はその程度に応じて合理的な処遇を行うという「均衡待遇規定」が明記された。合わせて「同一労働同一賃金ガイドライン」が公表され、全ての企業にその順守を求めている。
日本の労働市場をマクロで見れば、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少は確定した未来であり、これを補うには投資やイノベーションによる生産性の向上が必須である。他方、働く人たちに目を転じれば、「就社」や「滅私奉公」といった社会的ノルムは既に失われ、働いてお金を稼ぐことの意味や重要度、あるいはその手法についての考え方はかつてないほど多様化している。こうした状況に鑑みれば、「多様で柔軟な働き方のメニューがたくさんあり、どれを選んでも相応の対価が得られる」という環境をつくっていこうとするのは正しい方向性であろう。
ごく最近になって、足元の人手不足に悲鳴を上げる一部業界の陳情を受け、一連の労働規制を緩和しようとする議論が始まっている。もちろんある程度目先の問題に対処する必要はあろうが、本質的には少ない人手、短い時間で高い生産性を実現するための施策を柱に据えるべきであり、働き方改革の思想は維持するのが妥当だと思う。規制緩和に反対している一部野党の主張「また過労死を増やすんですか!」は、その意味で少し的を外している気がする。

