2025-12-4 マーケティングコンセプト
企業や公的機関が、対象とする市場や人々に対してその価値を提供するにあたり、どのようなアプローチを取るべきかを示す基本的な考え方のこと。単なる販売戦略というよりは、企業や組織全体の方向性を決定づける哲学ともいえる概念である。
マーケティングコンセプトは時代とともに変化していくものであり、今日に至るまでおおむね以下のような変遷をたどってきたと言われている。
1.生産志向・・・需要が供給を上回っていた時代のコンセプト。初めに製品ありきのシーズ志向である。生産能力の拡大と効率化に注力し、安く大量に作れば売れる、という考え方。
2.製品志向・・・消費者の意識が量的な充足から品質や有用性に移行してきた時代のコンセプト。より良く、より便利なものの提供を目指し、製品の品質や機能の向上に重点を置く。
3.販売志向・・・標準化された製品を安定して大量生産することができるようになった時代のコンセプト。市場の成熟に伴い、作ったものを売るための販売促進活動を重視する。
4.顧客志向・・・供給が需要を上回り、企業間の競争が激化してきた時代のコンセプト。「顧客が求めるものを作って売る」といういわゆるマーケットインの考え方が浸透し、現代のマーケティングの基礎が形成された。
5.社会志向・・・環境問題への対応やCSRの重要性が叫ばれ、企業が自らの社会的責任を意識せざるを得なくなった時代のコンセプト。マーケティング活動は顧客満足や企業の利潤だけでなく、社会全体の利益を考慮したものであるべきだという考え方。
6.デジタル志向・・・デジタル技術が急速に進展し、ECやデジタルマーケティング、SNSによる顧客からの発信などを背景にした現代のコンセプト。個々の顧客ニーズに細かく対応し、また、マーケティング活動の中に顧客も取り込む考え方である。
コトラーはこうしたコンセプトの変遷を「マーケティング1.0」から「4.0」という言葉で定義し直している。上記生産志向から販売志向(丸めるとプロダクトアウト型マーケティング)の時代が「マーケティング1.0」、顧客志向が「マーケティング2.0」、社会志向が「マーケティング3.0」、デジタル志向が「マーケティング4.0」に、おおむね該当する。
私見だが、日本の製造業の多くは未だに「良いものをより安く」という、生産志向からせいぜい製品志向のコンセプトに囚われているように思う。まともな営業、販促体制を持っていない中小企業は多いし、顧客重視を標榜しながら自分たちの作っている製品の最終用途を知らない、という例も珍しくない。何も新しい考え方が全て良い、というつもりはないが、せめて顧客志向(マーケティング2.0)のコンセプトが広く浸透すれば、日本の製造業は劇的に変われるのではないかと思っている。

