2025-11-8 定年退職制度

企業が定めた年齢に達した従業員が自動的に退職する制度。労働者と企業の双方にとって、雇用関係を整理し、人件費の調整や世代交代を促すための重要な仕組みとして、日本の労働市場にしっかりと根を下ろした慣行である。

新卒一括採用を行うためには、一定年齢に達した社員を退職させなければ新卒の枠を確保することができない。年功序列の賃金を維持しようとすれば、給与が高い高齢社員の人件費をあるところでカットする必要がある。定年退職制度は日本型の人事制度、いわゆる「三種の神器」を支えたサブシステムであった。労働者の側にとっても、定年は年金受給を柱とした新たな生活設計を行う節目となっている。

2025年4月、高年齢者等雇用安定法の例外措置期間が終了し、雇用機会確保の年齢を65歳まで引き上げるのが全ての企業の義務になった。これは少子高齢化による労働力不足の補填や、高齢者の勤労意欲の高まりといったきれいごとも理由ではあるが、最大の目的は、高齢者の自助努力と企業負担を組み合わせることによる「社会保障制度の維持」である。なお、義務化されたのは「雇用機会の確保」であり、65歳までの定年引上げが義務付けられたわけではない(勤務延長制度や再雇用制度も認められている)。また、法律では次のステップとして、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされている。

働く意欲も能力もある人間の就業機会を、年齢という基準で一律に奪うのは憲法の保障する基本的人権にもかかる問題ではないかという議論がある。筆者もこの考え方に賛成である。働く人の価値観がこれほどまでに多様化し、新卒一括採用形式も揺らいでいる今、その人が「仕事をやめる」タイミングについても、もっと選択肢があってよい。筆者自身が定年を待たずに退職したのも、「仕事のやめどきを自分で決めるため」というのが理由の一つである。

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