2025-12-5 マーケティングマイオピア
近視眼的マーケティング。顧客の嗜好や事業環境の変化の可能性をあまり考慮せず、現状が維持されることを前提にマーケティングを行ってしまうこと。1960年発行のハーバード・ビジネス・レビューでセオドア・レビッド教授が初めて用いた言葉で、それまで支配的な考え方であった生産志向・製品志向のコンセプトを絶対視することをやめ、顧客志向に転換すべきだと主張する中で登場した。この論文がマーケティングの歴史において、コトラーの言う「マーケティング2.0」への転換点となったと言われている。
レビッド教授が例として挙げているのはアメリカの鉄道業界である。彼らは自らの事業を鉄道に限定し、自動車や航空機の普及を競合と認識しなかったことでその地位を失った。この点においてマーケティング戦略は、自社の事業ドメインをどのように定義するか、という点に大きく関わっていると言える。もし自社の事業を例えば「人や物を運ぶ」とか「沿線を活性化する」としていれば、その後の展開は大きく変わったはずである。まさにドラッカーの「我々の事業は何か、何であるべきか」という問いに対する帰結と言える。
同様に、性能の劣る代替品の台頭に対処せず市場を失ってしまう「イノベーションのジレンマ」もマーケティングマイオピアの一例と言える。こちらはさしずめ、「顧客は誰か、どこにいるのか」であろう。近年マーケティングが取り扱う対象として「社会」や「デジタル」が追加されたとはいえ、その出発点が顧客であることは現在でも変わらない。

