2025-12-31 S-Rモデル

刺激-反応(stimulus-response)モデル。外部からの刺激(S)が生体の反応(R)を直接引き起こす、という行動主義心理学の最も基本的な理論である。パブロフの「古典的条件付け実験」(犬がベルの音に反応して唾液を出す)や、スキナーの「オペランド条件付け実験」(ラットがレバーを押すと餌が得られることを学ぶ)の土台となった学説でもある。マーケティングの文脈では、広告などの外部からの刺激が消費者の特定の反応を引き起こす(刺激がAならば反応はBである)、というシンプルなフレームワークとして理解されている。

S-R理論を提唱したアメリカの心理学者ジョン・B・ワトソンは、「心理学は客観的に観察できる行動だけを研究対象とすべきだ」と主張し、刺激と反応の間にあるはずのプロセス(意識や感情)にあえて触れなかった。このことで学術的な定義の厳密性は担保され、S-Rモデルは心理学が科学として発展するための基礎となったわけだが、その代償として、S-Rモデルでは「なぜその反応が起きるのか」という内面的な要因を説明できない(というか、説明することを放棄している)。

この「内面的な要因」を知ることこそ心理学ではないのか、という反論、あるいは「人や動物の行動は、外的環境によって完全に決定される」というテーゼに対する疑念が、のちに「S-O-Rモデル」や認知心理学が発展する動機になっている。

もっとも、だからと言ってマーケティングの実務にS-Rモデルが全く使えない、ということにはならない。プロモーションを例に取れば、特定の刺激に対する反応(例えば、ある広告を見たときに消費者がとった行動)を、その人たちの内面的な思考プロセスを考慮することなく、定量的なデータとして活用する(〇%の人たちがWEBでより詳細な情報を確認した、これは平均値より△%高い確率である)、というようなことは、現在でも普通に行われている。シンプルなモデルであるがゆえに、普遍的で息が長い理論である。

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