2025-7-20 クラウンジュエル
「王冠の宝石」。M&Aの文脈では被買収企業が保有する魅力的な資産や事業を指し、これらを切り離したり売却して自社の魅力をなくし、相手方の買収意欲を削ごうというものである。焦土作戦(Scorched earth)とも呼ばれる。取締役会や株主総会の決議など一定の手続きを経れば、理論的には自社だけの判断で実行することが可能だが、わざわざ自社の価値を下げるわけだから、現実には株主価値を棄損し、取締役の善管注意義務に違反する(=訴追される)恐れが多分にある。そのため国内において、クラウンジュエル的な脅し文句が使われた例はあっても、実際に行われた例はほとんどない。
これと似た防衛策に「ゴールデンパラシュート」がある。こちらは、買収の結果解任される取締役に巨額の退職金が支払われるよう、あらかじめ定めておくというものである(取締役でなく、従業員に多額の退職金を支払う「ティンパラシュート」というやりかたもある)。
買った後に大きな資金流出が発生することが分かっているので、買い手にとっては二の足を踏む材料になるという理屈だが、それを含めて買収コストだと割り切れる会社にとってはたいした問題ではない。アメリカではゴールデンパラシュートはむしろM&Aを促進するとさえ言われている。日本の文化になじまないためか、こちらも国内での事例は思い浮かばない。

