2025-9-11 達成動機説
アメリカの心理学者ジョン・ウィリアム・アトキンソンが提唱した、人が目標達成に取り組む際の心理的なメカニズムについての理論。アトキンソンによれば、人は「達成動機」と「失敗回避動機」という二つの動機を持ち、これらの動機のうちどちらが優勢かによって目標への取り組み方(積極性)が異なる。特に達成動機が強い人の場合は「成功確率50%程度の目標」を与えられたとき最もモチベーションが高まる、というメカニズムを示した。
達成動機が強い人は、失敗した時に「自分の努力が足りないことに原因がある」と考え、次の機会では目標達成に向けて自分なりに工夫する。したがって工夫次第で達成するかしないかという「がんばれば届きそう」な目標が効果的である、とされる。一方、失敗回避動機が強い人の場合は「そもそも自分には能力がない」と考えがちなので、比較的成功率の高い目標を与え、安心して取り組んでもらうことがモチベーションにつながる。
組織の中で上司がよく口にする「君に成長してほしいから少しストレッチした目標にしたいんだ」的なセリフの根拠と言える学説である。上司の側から言えば、組織の全体目標を達成するためには、各メンバーに必ず達成する目標ばかり与えるというわけにはいかない、というのが本当のところである。少しは無理をしてもらわないと仕方がない、というときにこういうきれいごとを言ったりする。これはこれで嘘ではないにしても、この上司が理解しておかなければならないのは、こうしたストレッチ目標が効果を発揮するのは、そもそも本人が「自分はやればできる」と信じている場合に限る、ということである。普段からメンバーの自己肯定感を引き出す努力をしていないのに、「成長してほしいから」は少し都合が良すぎる。

