2025-9-20 職務特性モデル

心理学者J・リチャード・ハックマンと経営学者グレッグ・オルダムが提唱した理論。仕事そのものの構造を分析・改善することで内発的な動機を高め、働く人の意欲を高めることを目指す。具体的には、5つの「中核的職務特性」が満たされると3つの「重要な心理状態」が形成され、仕事に対するモチベーションが高まる、というものである。

<中核的職務特性>

・技能多様性・・・業務に必要なスキルがバラエティに富んでいること。アージリスの言う「職務拡大」に近い概念。

・タスク完結性・・・仕事の始めから終わりまで関与できる割合が高いこと。ハーズバーグの言う「職務充実」に近い。

・タスク重要性・・・仕事の出来ばえが社内外に大きな影響を与えると感じられること。

・自律性・・・上からの指示に従うのではなく、自分なりに工夫してできる度合いが高いこと。

・フィードバック・・・仕事の成果について情報を得ることができ、手応えが感じられること。ここでいうフィードバックとは、上司や同僚からの「評価」ではなく、仕事そのもののパフォーマンス(同じことをするのに短い時間でできるようになるなど)のことを指す。

<重要な心理状態>

・仕事への有意味感・・・自分の業務が重要なものであるという実感。上記職務特性の「技能多様性」「タスク完結性」「タスク重要性」から得られるとされる。

・責任の実感・・・自分にはこの仕事を完遂する責任があると感じられること。「自律性」から得られるとされる。

・成果の理解・・・自分が行った仕事の結果を知り、次にどうすればいいかを考えられること。「フィードバック」から得られるとされる。

なお、職務特性から得られるこれらの影響は、「モデレーター」と呼ばれる調整要因(個人の特性)によって増減する。例えば成長欲求の強い人やスキル・能力の高い人は職務特性の改善によるモチベーションの上がり方が大きい。

筆者の知るアパレルが最近、裁断から縫製まで一人の人間がこなす「セル生産方式」を導入した。これなど中核的職務特性の多くを満たす事例である。さまざまな技能を用いて洋服を最初から最後まで仕上げ、出来ばえはその人の腕一つにかかっている。確かに気合は入るであろうし、この人は例え単工程(例えば裁断)の仕事に戻ったとしても、以前とは仕事への向き合い方が違っているだろう。